未払い養育費は強制執行によって回収できる?条件や注意点を解説
離婚した際に養育費について合意したのに、養育費支払義務者が養育費を支払わないことがあります。
その際に、強制執行という方法で養育費を回収できる可能性があります。
本稿では、未払いの養育費を強制執行によって回収できる場合についてみていきましょう。
強制執行について
強制執行とは、債務者が債務を履行しない時に、法的強制力をもって債権を回収する手続きです。
養育費を回収するための強制執行は、直接強制と間接強制の二種類があります。
直接強制とは、債務者の財産を差押えた上で、換価・処分し、直接債務に充当する手続きです。
また、間接強制とは、債務者に精神的なプレッシャーをかけるために、間接強制金の支払いを義務付ける手続きですが、間接強制金を履行しない場合、本債務と併せて直接強制手続きをする必要がありますので、直接強制手続きを行うのが基本です。
強制執行の条件
強制執行は、執行文の付された債務名義の正本に基づいて実施する(民事執行法25条)こととなります。
債務名義とは、裁判所や公証人等公的機関が債権の存在を確認した執行力のある文書であり、確定判決や執行証書(公証人が作成した公正証書で、債務者が強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの)等がこれにあたります(民事執行法22条)。
また、執行文は裁判所書記官また執行証書の原本を保存した公証人が付与した、債務名義に執行力があることを公的に証明する文書です。
強制執行をするために、まずは債務名義の正本及び執行文を揃える必要があります。
債務名義にあたるもの
裁判離婚の確定判決は債務名義にあたります。
また、養育費を取り決める際に、公証人が養育費について公正証書を作成し、債務者が債務不履行時に強制執行に服する旨の陳述が記載されたものも債務名義にあたります。
ここで注意すべきことは、協議離婚した時に、二人の間で養育費について合意した文書は債務名義ではない点です。
債務名義がない場合、債務名義を作るために相手と相談し、執行証書を作る方法があります。
しかし、現実的には債務不履行になった養育費支払義務者はこれに応じないでしょうから、その場合には、家庭裁判所における調停・審判・訴訟などの法的手続きを取る必要があります。
強制執行の注意点
債務名義及び執行文さえあれば、必ず強制執行手続きを通じて、養育費を取り戻せるわけではありません。
以下、強制執行の申立てをする時の注意点についてみていきます。
- 相手に執行可能な財産があるか
前述の通り、強制執行は債務者の財産を強制的に換価処分して債権を実現する手続きである以上、債務者には執行可能な財産がないと、手続きを進む意味がないです。
- 相手の住所がわからない
強制執行を申し立てる際には、相手の住所を把握する必要があります。
しかし、離婚後に連絡を取らなくなった場合など、相手の現住所がわからないというケースもよくあることです。
その場合には、弁護士会照会(弁護士法第23条の2)を通じて相手の現住所を確認する方法があります。
相手の住所の特定が困難な場合は、早めに弁護士のサポートを求めましょう。
- 相手の財産を把握していない
相手に執行可能な財産があるのに、不動産や銀行預金の具体的な情報を把握していないケースがよくあります。
この場合には、相手方から任意に開示してもらうか、裁判所に財産開示請求を申し立てる方法があります。
養育費に関する問題は、ひやま法律事務所にご相談ください
強制執行の申し立てには、専門的な知識や対応が求められるため、弁護士へのご相談がおすすめです。
ひやま法律事務所では、養育費に関するご相談を承っております。
お困りの方はお気軽にお問い合わせください。