ひやま法律事務所 > 記事 > > 個人再生時の退職予定の有無と退職金の取り扱いについて

個人再生を申し立てる際には、返済すべき金額を計算し、地方裁判所へ返済計画を提出する必要があります。

返済すべき金額を決めるには、借金の残高だけでなく、現在所有している財産の総額も大きく関係します。

この記事では、個人再生を申し立てる際の退職金の取り扱いを、退職予定の有無に合わせて解説します。

個人再生とは

個人再生とは、借金の額を5分の1ほどに減額し、原則3年間で分割して返済していく方法です。

返済計画を地方裁判所へ提出し、裁判所の認可を得たうえで、計画通りに返済していきます。

返済する金額の決め方は、借金の額や所有している財産額によって異なります。

返済額は、次のうち一番大きいものが採用されます。

  • 法律によって定められた最低弁済額
  • 所有財産から手元に残せる財産額を差し引いた額(清算価値)
  • 安定した給与所得がある場合、手取り額から生活費を差し引いた額の2年分

清算価値とは

清算価値とは、自己破産した場合に失う財産額のことです。

自己破産すると、所有していた財産のほとんどは差し押さえられ、換価されたうえで債権者に分配されます。

個人再生を行った場合にも、自己破産した場合と同程度以上の返済を行わなければいけません。

返済額を決定する際には、清算価値を計算し、最低弁済額などと比較したうえで決定します。

清算価値の対象になる財産の一例は、次の通りです。

  • 現金
  • 預貯金
  • 自動車
  • 不動産
  • 退職金

ただし、生活を続けていくために必要な最低限の財産は手元に残すことが認められています。

そのため、所有財産の総額から手元に残すことができる財産額を差し引いた金額が、清算価値となります。

個人再生における退職金の取り扱い

退職金は基本的に清算価値に含まれます。

しかし個人再生を行った時点で退職の予定がなかったり、退職が決まっているもののまだ退職金を受け取っていなかったりする場合には、退職金の一部だけが清算価値に含まれます。

退職のタイミングと清算価値への計上額

清算価値の判断は地方裁判所ごとに異なるため、ここでは一例として、東京地方裁判所の基準をご紹介します。

個人再生時にすでに退職しており、退職金を受け取っている場合には、退職金は通常の現金や預貯金として扱われます。

生活に必要な金額を差し引き、残った全額を清算価値として計上します。

東京地方裁判所の場合、手元に残せる現金は99万円まで、預貯金はすべての口座を合算して20万円以下です。

退職日が決定している場合や、すでに退職しているものの、まだ退職金を受け取っていない場合には、退職金の見込み額の4分の1が清算価値に含まれます。

ただし退職金の見込み額が80万円以下の場合には清算価値に計上されません。

全額を手元に残すことが可能です。

個人再生時に退職の予定がない場合には、仮にその時点で退職した場合に受け取れる退職金の見込み額で判断します。

退職金が支払われるかどうかは、就業規則や雇用契約書などに記載されていることが一般的です。

退職金の見込み額は、会社に退職金見込額証明書を発行してもらうことで確認できます。

ただし、将来的に退職金が見込み額通りに支払われる保証はありません。

そのため清算価値には、退職金見込み額の8分の1を計上します。

またこの時、退職金見込み額が160万円以下の場合には、清算価値として計上せず全額を手元に残せます。

退職金の判断をする基準日

個人再生を申し立ててから、計画が認可されて実際に実行されるまでには、数か月程度かかります。

申し立てから実行までの間に退職金が支払われる場合、いつを基準に清算価値の判断をするかによって、退職金の全額が清算価値に含まれるのか、一部だけなのかが変わってしまいます。

通常、清算価値の判断は、裁判所に個人再生の計画を認可された日を基準にすることが一般的です。

個人再生の申し立てを行うと、裁判所から個人再生のスケジュールが送られてきます。

退職金の取り扱いは、この個人再生の認可予定日に合わせて判断します。

認可予定日までに退職金を受け取っている場合、退職金は現金や預貯金として清算価値に計上します。

私的年金を利用している場合

退職金の代わりに確定拠出年金などの私的年金を利用している場合があります。

私的年金による退職金は、その全額が清算価値には含まれません。

年金は差し押さえが禁止されている財産であり、たとえ自己破産した場合でも全額を手元に残すことができるためです。

まとめ

この記事では個人再生をした場合の退職金の取り扱いについて解説しました。

個人再生を行うと、所有する財産から生活に必要な最低限の財産を差し引いた金額を返済していくことになります。

退職金の取り扱いは、退職する予定の有無や退職金の受け取り時期に応じて変わります。

個人再生の計画を立てることは簡単ではありません。

個人再生をお考えの場合には、弁護士までご相談ください。

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